20246078
概要
研究機関の長による実施許可を取得する前の研究実施
(他機関主導の多機関共同倫理指針観察研究)
他機関研究代表者が他機関倫理審査委員会の承認を取得後、共同研究機関である当院で研究対象者1名からインフォームド・コンセント(IC)を取得し、本研究へ登録後に試料(末梢静脈血採取1回)および情報(診療情報等)の収集を行った
その後、当院研究責任者が自己点検を行ったところ、当院での研究開始に先立って必要となる研究機関の長(当院管理者)からの実施許可取得手続きが、研究名の類似した別研究との混同から、当院での研究開始前に行われていなかったことが判明した。
対応状況等
・経緯
本研究実施グループでは、アグレッシブATL(成人T細胞白血病であって、急性型、リンパ腫型、予後不良因子(LDH高値,アルブミン低値,BUN高値)のいずれか1つ以上を有する慢性型のもの)を対象とする、下記2件の生命・医学系研究を実施していた。
(1)「アグレッシブ成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)の予後に影響する因⼦について検討する多施設共同前向き観察研究
(2)「アグレッシブATLにおける予後因子の検討と個別化医療の確立を目的とした全国一元化レジストリおよびバイオレポジトリの構築」【本件重大不適合が発生した研究】
2024年6月、研究(2)を実施していた他機関において、適切な研究実施許可の取得なしに研究対象者の登録および試料・情報の収集がなされていた不適切事案が判明した。
同9月、同様の不適合が別の機関で発生していないか確認するため、研究代表者より各参加機関の研究責任者に対し、研究実施許可の取得状況に関する確認依頼があった。
これに応じ点検を行った結果、当院において、研究(2)の当院実施許可を申請することなく研究対象者1名の登録および試料・情報の採取がなされたことが判明した。
・発生要因
研究代表者および本研究事務局から研究(1)および(2)への対応手順等が共有されていたが、両研究の主目的が同じであったことから、当院研究者は研究(2)を、研究(1)に付随研究が追加された変更申請後の研究と誤認した。
また当院研究グループ内で、当院における実施許可申請の状況について情報共有が不十分であった。
・是正措置および再発予防措置
【当院管理者による対応】
2024年10月、当院研究責任者より当院管理者へ本件重大不適合発生の報告がなされ、同月、当院管理者は以下5点の指示および注意喚起を行った。
1) 実施許可を得ずに研究を実施することは重大な逸脱であり、以後厳に行わないこと。
2) 本件不適合の発生について、速やかに研究代表者に通知し、倫理審査委員会への報告等、適切に対応すること。なお倫理審査委員会の意見を得た場合は、続報にて報告のこと。
3) 本件重大不適合への対応について、研究代表者と協議の上、速やかに実施すること。なお実施内容およびその完了状況を続報にて報告すること。
4) 今後当院で本研究を実施する場合、速やかに実施許可申請を行い、当院管理者の指示に従うこと。なお、研究(1)の当院終了手続きも同時に行うこと。
5) 適切な研究申請手続きについて再確認し、研究グループで共有、再発防止に努めること。
【研究代表者による対応】
2024年11月、他機関研究代表者より他機関倫理審査委員会へ本件の報告がなされ、同委員会による審議の結果、本件に関する重大不適合発生の報告は承認された。
なお、今回の報告内容は研究の適正性を損なう(おそれのある)事案であり、本研究計画の継続は承認するものの、倫理指針の規定により厚生労働大臣への報告を要するとの付帯意見が通知された。
【当院研究責任医師による対応】
研究責任者は研究代表者と協議の上、再発防止に努めるとともに、当該研究対象者の試料・情報は研究事務局にて破棄することとなった旨を当院管理者に報告した。
また原疾患の特性から、当該研究対象者は既に他界された可能性が高く、再同意の取得は困難と考えられること、当院から転院されて2年が経過しており現在の連絡先が不明であること等を総合的に考慮した結果、本件に関する研究対象者およびご家族への対応を断念した旨を報告した。
【再発予防措置】
当院において、下記2点の対応を行うこととした。
(1) 当院での研究実施にあたっては、研究代表者からの説明および研究計画書等を十分確認し、研究の実施に係る情報の確認を徹底すること。
(2) 当院研究グループ内で、適切な情報共有を行うこと。
また研究事務局においては、以下の再発予防措置が講じられた。
①参加施設の実施許可書を確認後に、患者登録/検体採取に必要なEDCアカウント/研究用資材を発行/発送すること。
②参加施設の実施許可をリストにて管理すること。